承認工事・自費工事

 私人などが道路の工事や維持を行うときは、道路管理者の承認が必要です。 これらの工事を承認工事や自費工事、請願工事、24条工事と言い、歩道の切下げ工事や法面埋立工事などが行われています。

承認工事・自費工事とは

表−道路占用と承認工事の違い
道路占用 承認工事
工事費用の負担 占用者 承認を受けた者
設置物の位置づけ 占用物件 道路本体か道路附属物
財産の帰属 占用者 道路管理者
管理者 占用者 道路管理者

 私人や道路管理者ではない行政が、道路の工事や維持を行うときは、道路管理者の承認が必要です。 これらの工事を承認工事や自費工事、請願工事、24条工事と言い、申請者が自らの負担で工事を行い、設置した工作物は道路になります道路法 第24条
 なお、他の道路管理者が工事を行うときは、道路管理者間協議になります。

承認工事・自費工事の例

歩道の切り開きの写真

歩道の切り開き(自衛隊練馬駐屯地)

写真出典〕当サイト撮影(R1.6)

歩道の切り下げの写真

歩道切下げ

写真出典〕当サイト撮影(R1.5)

法面埋立ての写真

法面埋立て

図表出典〕九州地方整備局HP

 承認工事や自費工事は、次のようなときに行われています。

  • 車両乗入れのための歩道の切下げ工事
  • L型側溝等の切下げ工事〔参考:埼玉県志木市HP東京都狛江市HP
  • ドライブインやガソリンスタンドの出入路の歩道の切り開き
  • 荷物積卸しのためのガードレールの撤去工事(認められることは少ない)
  • 法面埋立工事 (占用となる場合や、承認と占用が競合する場合がある)
  • 都市計画事業や土地区画整理事業で行われる道路に関する工事
  • 農道等を道路と重複させて整備する工事

承認工事・自費工事の審査

 承認工事・自費工事の承認は自由裁量です。 道路管理者は、その工事の必要性、その設置物ができることによる道路利用者の安全性、構造の妥当性、施工の適正さ、道路管理上の支障の有無などを総合的に判断して承認するかしないかを決めます 1)

 承認にあたっては、道路構造の保全、交通の危険防止、円滑な交通の確保などの観点から、必要な条件を附することができます道路法 第87条。 次のような条件が附されています 2)

  • ガードレールを撤去した箇所に、取り外し可能なチェーンを設置させる。
  • 法面埋立てにあたり道路への雨水の流出を防ぐ側溝を設置させる。
  • 承認工事により設置された街灯の電気代を負担させる。
歩道切下げの審査

 歩道の切下げの承認工事申請は比較的多いため、多くの道路管理者が審査基準や許可基準を定めています。 建築会社が事前相談に来ることが多いので、どうすべきかを明確に伝える必要があります。

交通安全の視点

 マウンドアップされた歩道は車から歩行者を護るためのものなので、切下げを設けると歩行者を危険にさらします。 そのため、切下げが認められるのは民地側に車庫等がある場合に限られ、切下げの数は原則として敷地あたりひとつ、切下げの幅は出入りする車両に応じた幅とします。
 交差点や横断歩道、曲がり角付近など、車が出入りすると危険な場所は承認しません。

道路構造の視点

 歩道舗装や歩道内の側溝に車が繰り返し乗ると壊れます。 そのため、出入りする車両に応じた舗装や側溝に代える必要があります。 また、車いすが通れる幅の平坦部と、歩行者が安全に通行できる勾配のすりつけ部が必要です。 具体の構造は道路管理者が指示することが多いようです。 なお、歩道が不適切な状態になると道路管理瑕疵を問われることもあります。〔参考:歩行者の穴ぼこや段差による事故

支障物件等

 切り下げ箇所に街路灯や街路樹、電柱などがある場合、原則として承認できません。 申請者が自らの負担で街路灯などを適切な場所に移設するときや、占用物件の移設について占用者との協議が整ったときは、承認することができます。
 切下げを移設するときの古い切り下げの現況復旧も、申請者の負担で復旧をしないときは承認できません。

工事施行

 適切な保安対策や交通規制が行われない工事は承認できません。
 なお、適切な保安施設を設けない承認工事が行われていたことを道路管理瑕疵とした裁判例があります 3)

その他の規定

 承認工事の費用は承認を受けた者の負担で道路法 第57条、許可条件に違反すると監督処分の対象となります道路法 第71条。 散水や除草などの道路構造に影響を与えない軽易な維持は、道路管理者の承認を得ないで行えます道路法施行令 第3条。 道路上で工事や作業を行う場合には、道路管理者からの承認の他に、警察署から道路使用許可を受ける必要があります道路交通法第77条