落石や道路崩壊に関する事故

 落石が車両を直撃した事故、落ちていた落石に車両が衝突した事故、通行中に道路が崩壊した事故、崩壊した道路に車両が進入した事故、道路が崩壊して道下に損害を与えた事故などについて紹介しています。
 落石が車両を直撃した事故では 多くが管理瑕疵を問われています。

落石や道路崩壊に関する事故の概況

落石防護網の写真

落石防護網(東京都奥多摩町)

写真出典〕当サイト撮影(R1.5)

法枠ブロックの写真

法枠ブロック(山梨県小菅村)

写真出典〕当サイト撮影(H28.11)

 道路より上の斜面からの落石が車両に当たったり、道路より下の斜面が崩壊して車両が転落したり、道路が崩壊して道下に被害を与えたなどの事故です。

 管理瑕疵を問われたか否かを別として、資料に掲載されている裁判例から事故が起きた状況をみると、次のような傾向が見られます 1) 2) 3)

○ 落石が車両を直撃した事故

 落石が車両を直撃した事故は14件が掲載されていて、そのほぼ全てで道路の管理瑕疵が問われています。 既に崩れかけているところに侵入したなどの状況を踏まえて、4割の案件で過失相殺が行われています。

○ 落ちていた落石に車両が衝突した事故

 落ちていた落石に車両が衝突した事故は、4件が掲載されていて、管理瑕疵が問われていています。 全ての案件で、前方不注視などにより3〜6割の過失相殺が行われています。

○ 通行中に道路が崩壊した事故

 車両の通行中に道路が崩壊した事故は8件が掲載されていて、そのうち5件で管理瑕疵を問われています。 過積載などにより過失相殺が行われている事例があります。

○ 崩壊した道路に車両が進入した事故

 道路が崩壊した箇所に車両が進入した事故は、5件が掲載されています。 崩壊箇所として囲われていた箇所に入って転落した事故では管理瑕疵を問われず、その他の4件では管理瑕疵を問われていて、4〜8割の過失相殺が行われています。

○ 道路が崩壊して道下に損害を与えた事故

 道路が崩壊して道下に損害を与えた事故は12件が掲載されています。 主に因果関係の有無で管理瑕疵の有無が判断され、6件は管理瑕疵を問われず、6件は管理瑕疵を問われています。

落石や道路崩壊に関する事故の事例

 落石や土石流、地滑りなどに直撃された事故では、その発生が事前に予見できるのに道路管理者が適切な措置をしていなかったとして、管理瑕疵が問われた裁判例が多くあります。

 予想を超える異常気象が原因だったとして、管理瑕疵を問われていない事例や広島国道191号道路護岸崩壊事件 第1審、賠償額から9割の減額が行われている案件があります神奈川国道138号土石流自動車転落事件

広島国道191号道路護岸崩壊事件 (広島地判平成5年2月24日)

○ 事故の概要
 昭和63年(1988)。 集中豪雨により避難命令がでたため消防団員が2名を乗せて避難先へ走行中、川の護岸が崩壊して道路が陥没し、自動車が川へ転落して3名が死亡した。

○ 地裁判決の要旨
 予測を超えた集中豪雨が護岸を崩壊させたものと認定する外ない。
 護岸の崩壊は予測できなかったし、護岸の崩壊から事故まではわずかな時間で通行止め等の措置をとることも不可能であった。
(同乗者の相続人が、道路管理者と運転者の相続人、損保会社を訴えた裁判で、運転者の相続人等も無責。)

○ 事件の経過
 被害者が控訴し、控訴審で和解した 1)

 1) 道路管理瑕疵研究会編集、第四次改訂版 道路管理瑕疵判例ハンドブック、ぎょうせい、2022年、P.167
 参考) 県北西部豪雨災害(速報版)広島県 昭和63年7月豪雨

神奈川国道138号土石流自動車転落事件 (横浜地判平成15年4月17日)

○ 事故の概要
 平成3年(1991)。 集中豪雨の中、国道を走行していた乗用車が沢を跨ぐ橋梁上で土石流の直撃を受けて約30m下の川に転落し、運転者が死亡した。
 事故地点は異常気象時通行規制区間の中で、時間雨量50o又は連続雨量200oに達した時点で通行止めをすることとされていて、事故車両の通過後に通行止めがされた。

○ 判決の要旨
 事故があった沢で多量の降雨があったときに土石流の発生の危険があるが、土石流が本件橋梁上を通過することは予見不可能であったので、防護施設を設置していなかったから道路管理上の瑕疵があったとはいえない。
 道路管理者は毎正時ごとに通行規制の判断をしていたが、雨量テレメータで10分毎の降雨量が把握されていた。 10分毎の直前1時間の連続雨量が50mmを越えたときに通行規制をしていれば、被害者が規制区間に進入しなかったことがあり得た。 10分間雨量をもとに時間雨量を計算し通行規制を実施しなかったことは、道路管理上の瑕疵というべきである。
 本件事故は観測史上例を見ない異常な降雨によるところも大きく、その分について被告に責任を負わせるのは相当ではないから、賠償額から9割を減額する 1) 2)

 1) 横浜地判平成15年4月17日裁判所裁判例情報
 2) 訴訟事例紹介 神奈川国道138号土石流自動車転落事件道路行政セミナー 2003.6